中央区の敬老事業の充実ぶりを東京23区の他の区と比較してみる。

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 こんにちは、ninofkuです。明日9月18日は敬老の日です。せっかくなので敬老ネタを、ということで今回は中央区の敬老事業と東京23区の他の区との比較について書いてみようと思います。敬老事業とは、自治体が高齢者(自治体によって年齢の定義はさまざま)に対して長寿のお祝いなどを理由としてイベント招待や金品、銭湯の割引券などの配布を行う事業です。最初に書いておくと、わたしはこれらの敬老事業についてあまり望ましく思っておりません。それぞれの事業について、そもそも何を目的として行っているのかを改めて見つめ直すことで、その目的を果たすための手段として現在の事業の内容及び規模が適切であるのか、もっと別のやり方はないのかという点について考えていく必要があるのではないかとわたし個人としては思います。

 とはいえ、何が何でもこれらに関する予算を削減するべきという乱暴な議論をしようというわけでもありません。問題は、このような事業が行われ予算が使われていることについて住民がしっかりと理解、納得しているかという点です。その上での支出なのであれば、極端な話今以上にこれらを充実していくことだって構いません(わたし個人としては反対でも、それが多数派なのであれば従わざるを得ません)。この点について、現時点では大多数の住民がそもそもこのような事業が行われていることすら認識していないというのが実情かと思われます。今回の記事によってある程度具体的な内容や予算額について紹介することで問題提起したいと思います。ぜひ皆さんのご意見もお聞かせいただければと思います。

興味を持ったきっかけ

 まず、今回扱う敬老事業についてわたしが興味を持ったきっかけから始めましょう。わたしは現在2歳の子を持つ父親です。今年の4月には無事、区立認可保育園の1歳児クラスに入れましたが、0歳児の時点では希望した全ての保育園の選考に漏れて色々と大変な目に遭いました。この経験から自治体の子育て関係の施策に関心を持つようになり、このブログを開設に至っているわけですが、その関心の行き着く先の一つとして出てきた要素が自治体の予算でした。たとえば保育園をどの程度作るのか、どの程度子どもを受けいられるようにするのかということは全て予算ありきです。十分に予算配分が為されていなければ、どんなに窓口の職員の方々が頑張ったところで、住民の側が声をあげようとも待機児童の問題は解決しません。この問題意識から、区の情報公開コーナーに行ったり、情報公開請求を行ったりで情報を収集して、ようやく手に入ったのが以下の過去記事で紹介した平成29年度の予算情報です。 

ninofku.hatenablog.com

 

 予算のファイルは以下からもアクセスすることができます。

中央区の平成29年度予算(一般会計)Googleスプレッドシートが開きます)

 

 このデータによって中央区が何にどの程度予算を割いているのかを簡単に調べられるようになりました。このデータを眺めていて、たまたま気付いたのが高齢者向けの施策、特に敬老事業と称される一連のサービスの充実ぶりなのでした。

中央区の敬老事業

 それでは、中央区の敬老事業にはどういったものがあるのでしょうか。主要なものとして挙げられているのは以下の3つです。この3つに対してそれぞれ説明していきます。

・敬老イベント(敬老大会)

・敬老買い物券

・敬老入浴事業

敬老イベント(敬老大会)

 70歳以上の方を対象に区内の劇場にご招待というイベントです。目的は「70歳以上の方に楽しい1日を過ごしていただくため」(平成27年7月11日の「区のおしらせ 中央」より)。招待者は約8400名で、応募者多数の場合には抽選とのこと。年齢別人口を確認したところ70歳以上の方は17,245人(2017/09/01時点)おられるので、当選確率はだいたい50%です。平成29年は新橋演舞場松竹新喜劇 新秋公演。ちなみに平成28年度は歌舞伎座で歌舞伎、平成27年度は明治座で「三匹のおっさん」。

 今年の会場である松竹のWebサイトを確認したところ、期間中の一部の公演を貸切している模様です。今年度の開催日と日程がこちら。中央区のWebサイトからの情報です。

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一方で、松竹のWebサイトがこちら。「午前の部」に「貸切」の文言があります。

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公演情報 日程・上映時間:新橋演舞場-歌舞伎・演劇|松竹株式会社

 

 予算額は平成29年度で6,667万円。平成28年度は9,077万1千円。招待者数はおよし8400名であるため、平成29年度では1人あたり8000円くらいかかっていることになります。ちなみに平成28年度の予算で計算すると1人あたり1万円を超えます。 

参考)敬老大会 中央区ホームページ

敬老買い物券

 75歳以上の方に対しての区内共通買い物券を配布するものです。目的は「長寿のお祝い」(中央区Webサイトより)。年齢と金額については以下のとおり。75歳以上は毎年3000円もらえて、これに加えて喜寿(77歳)や米寿(88歳)の場合には「すし券5000円」がプラスされます。100歳を超えるとこの金額が毎年1万円に増額されます。

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参考)敬老買物券 中央区ホームページ

 

 予算額は平成29年度で4,685万7千円。平成28年度は4,497万2千円。年齢別人口を確認したところ75歳以上の方は11,740人(2017/09/01時点)おられるので、平成29年度では1人あたり4000円くらいの支給です。

敬老入浴事業

 65歳以上の方に対して敬老入浴証を発行するという事業で、この入浴証を持っていると区内の全公衆浴場及び他区協力浴場に1回100円で利用できます。通常料金は東京都で共通らしく460円なので、1回あたり360円お得。しかも回数は無制限という太っ腹さ。目的は「健康の維持増進や近所の方々との交流」(中央区Webサイトより)。

予算額は、平成29年度で大台超えの1億462万8千円。平成28年度の場合には1億2000万7千円。年齢別人口を確認したところ65歳以上の方は24,086人(2017/09/01時点)おられるので、平成29年度では1人あたり4300円くらいの支給です。

参考)敬老入浴事業 中央区ホームページ

補足:子育て関係予算との比較

  何となく予算額だけを書かれても規模感が分かりにくいかと思います。このブログをご覧いただいている方の多くは子育て世代の方が多いかと思いますので、子育て関係の予算、特に位置付けが似ている出産関係のお祝いの予算規模を挙げておきます。出産した際にもらえるタクシー券と買い物券です。対象となる人の数が異なりますので一概に比較できるものではありません。あくまで参考としてお考えください。

 

<高齢者向け事業>

・敬老大会 → 6,667万円

・敬老買い物券 → 4,685万7千円

・敬老入浴事業 → 1億462万8千円

<子育て世代向け事業>

・出産支援タクシー利用券(タクシー利用券1万円分) → 2774万2千円

・出産祝い品(区内共通買い物券3万円分) → 6674万3千円

 

 

東京23区の他区との比較

 さて、とりあえず中央区の敬老事業について紹介してきました。上記に書いてきたのはあくまで中央区の実態のみです。これだけを取り上げて善し悪しを言うことはできません。一見すると高額であるように思えるものでも、他の自治体と比べれば質素なものである可能性は捨てきれません。他の自治体と比較して初めて、その内容と規模の妥当性について判断することができます。そこで、これらの事業について、東京23区でどのようなことを行っているのかについて比較してみました。

東京23区の敬老事業の比較リスト

 東京23区それぞれでの敬老事業の内容は以下のとおりです。今回対象としたのは敬老の日などに実施されているイベント、お祝い金、入浴事業の3点です。これまで紹介してきた中央区における敬老事業を基準として調査したためです。したがって、他の区ではこれ以外の事業を行っている可能性もあります。また、あくまで各区のWebサイトを確認して調査したものですので誤りがある場合はありますのでご注意ください(特に敬老イベントが不明の箇所は、わたしが探せなかっただけの可能性があります)。

※ 上記の埋め込みの表が見づらい場合には、こちらからも閲覧することができます。

東京23区の敬老事業比較Googleスプレッドシートが開きます)

 

 このそれぞれの事業に対しての調査結果と、中央区の位置付けについて整理します。 

「敬老イベント」についての比較

 まず、敬老イベント自体を開催していると思われる区が半分以下の10区しかありません。さらに、この内の6区は一般的なお役所的記念式典の形式を取っているようであり、さして金額がかさむとは思われません。一方で、千代田区、文京区、渋谷区については記念式典の中で芸能人を招いてショーを行っているようであり、これは当然それなりの金額がかかることと思われます。千代田区の例で言うと費用は1400万円程度のようです(千代田区敬老事業検討会の議事録に記載あり)。

 このように見ていくと、中央区の特殊性は際立っています。一応式典の要素もあるようですが時間枠としては30分程度で、それ以降の3時間は観劇でこちらがむしろメインのイベントです(公演の一部を貸切しているのですから当然ですが)。そして金額規模も平成29年度では(相対的には他の区よりも高いであろう)千代田区のおよそ5倍です(6667万円)。金額がここまで膨れあがるのは既存の公演を貸切していて、かつその座席を単純に買い占めているためと思われます。この他、当選率が50%というのも影響している可能性がありますが、他の自治体の競争率に関する情報はなかったので調べられませんでした。

「お祝い金(現金・買い物券)の進呈」についての比較

 次にお祝い金の進呈についてです。こちらについては大半の区が何らかのお祝い金の進呈を行っていますが、文京区など一部の区ではお祝い金ではなく何かしらのお祝い品を進呈しているケースもあります。千代田区のように、お祝い金に加えて特定の年齢で金杯、銀杯などのお祝い品を進呈している区もあります。金額の幅はご覧のとおり様々で、さらに対象についても70歳からだったり88歳からだったりと多様です。

  お祝い金については、中央区は他の区と比べて極端に高いわけではありません。ただし、中央区の場合には喜寿(77歳)や米寿(88歳)などの一定の年齢でのみもらえるわけではなく、75歳以上になれば3000円は毎年もらえるものであるため、通算の金額ということになればそれなりに高額になります。一定の年齢以上になると毎年もらえるという仕組みになっている区は少なく、そうなっている区にしても「100歳以上」というように対象をかなり狭く設定しているところが多い印象です。

「敬老入浴事業」についての比較

 最後に入浴事業についてです。こちらについては全ての自治体が何らかの事業を行っています。主要な要素は2つで、金額が無料であるか割引であるか、そして回数制限があるかどうか。千代田区、港区、新宿区、世田谷区については無料券を配布していますが、それぞれ回数制限が設定されています。その他の自治体については割引で、1回あたりの金額が50円から230円まで様々です。割引である場合についても回数制限を設けている区が多いです。墨田区や渋谷区、杉並区のように、回数制限ではなく特定の曜日のみをサービスの対象としている区もあります。若干特殊なのが品川区で、入浴料の割引などはありませんが、入浴開始時間の前に健康体操やカラオケなどのプログラムを提供する「出会いの湯」という事業を行っています。 

 中央区の敬老入浴事業を他区と比較してみると、1回あたりの金額が安い(100円)にもかかわらず、回数制限がないという点が特徴として挙げられます。同じ金額設定の区は少なくありませんが、これらは回数制限なり曜日制限なりといった制約を設けています。一方、葛飾区と江戸川区のように回数制限のない区は他にもありますが、その場合には1回230円と割引の幅を抑えています。中央区は金額が安い(割引幅が大きい)にもかかわらず回数制限が存在しないことが、1億円を超える予算規模になっている要因と思われます。

 とはいえ、無料券を配布している区よりは相対的に負担は軽いようです。一つの比較材料として千代田区の例を挙げると、費用は平成29年度で6400万円程度のようです(千代田区敬老事業検討会の議事録に記載あり)。金額規模としては中央区の方が上(1億462万8千円)ですが、千代田区の場合には65歳以上の人口が中央区のおよそ4割であることから、1人あたりの金額で言えば千代田区の方が高いです(中央区は1人あたり4300円、千代田区は1人あたり5900円程度)。

総評

 これらの結果を簡単にまとめると以下のとおりかと思います。総じて言うと、中央区の敬老事業はかなり充実していると言えそうです。

 敬老イベント

  → ほぼ確実にトップクラス。圧倒的に他の区よりも豪勢で金も掛かっている。

 お祝い金

  → 全体の平均あたりか若干上に来る程度。

 敬老入浴事業

  → トップではないにせよ、全体平均よりは確実に上。

最後に

 今回は中央区の敬老事業と、その比較のために東京23区の他の区のサービス内容について紹介してきました。あなたの感想はいかがでしょうか。高齢者ばかり優遇されて腹立たしいとお考えでしょうか。それとも、これらは長寿のお祝いとして考えれば当然にあって然るべきものとお考えでしょうか。わたしとしては、これらの予算は過大であると考えています。例えば、敬老イベントについては他の区と同等レベルにまで縮小しても良いのではないでしょうか。そうすれば芸能人を招いたにしても現在の半額程度で実現できるのではないかと思われます。その代わりに、地域の幼稚園や小学校などから子どもたちを招いて演奏や劇をやってもらったり、老人クラブの発表の場にしたって良いでしょう。中央区には「こども歌舞伎」などもあります。浮いた予算をこれらの活動助成などに充てれば、敬老イベントが単にその日1日の楽しみだけでなく、地域における世代間の交流の一つの手段ともなり得るのではないかと思います。敬老入浴事業についても1回あたりの割引額を下げるか、利用回数の上限を設けても良いのではないかと思います。他方で、他の世代にも一部これらの優遇措置を広げることで、本当の意味での「近所の方々との交流」が実現できるのではないでしょうか(現在も「ふれあい銭湯」という事業はありますが、対象は金曜日のみでありサラリーマンには現実的に厳しいです)。

 わたし個人の考えとしては上記のとおりです。単純にこれらの予算を削減してしまえということを申し上げたいわけではありません。あくまで個々の事業の趣旨に則り、より活かすお金の使い方はないかと模索していくべきではないかと考えています。この点において、これら敬老事業には様々な改良の余地があるように思われます。

 

 最後の最後に。わたしとしては今回の記事を受けて賛成と反対、どちらの感想を持っていただいても構いません。冒頭にも書きましたが、何よりも大事と考えるのは住民が自治体としてのサービスとしてどのようなことを行っているのかを理解することで、そこから導き出される意見は等しく尊いものであろうと考えるためです。。今回の記事によって自治体のサービスへの理解が広がることで、今後のサービスがどうあるべきかについての健全な議論が進むことをわたしは願っております。

 

 

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