中央区における予算関係情報の公開状況について

お金をせびる人のイラスト(男性から男性)

 どうも、ほづみゆうきです。前回の記事では日本のオープンデータの現状を踏まえ、どういったデータを公開するべきかについて書いてきました。わたしの考えるもっとも重要なオープンデータは予算や執行状況に係るもので、このデータはG8のオープンデータ憲章においても重要な位置を占めており、オープンデータの意義・目的の実現にも大きく寄与するものです。にもかかわらず、日本の自治体においてほとんどの自治体はこれらの情報を公開しておらず、公開している一部の自治体においてもまともに公開されているとはとても言えない状況です。

 そして、2つの点を主張しました。1点はオープンデータの意義・目的を達成していくためには、これら予算等の情報を積極的に公開していくべきということ、さらには住民の側から主体的に関わりデータの開示を求めていくこと。もう1点は、始められるところから始めることにより日本の中で良い事例を作っていくこと。

ninofku.hatenablog.com

 

 これらを踏まえて、今回はわたしが在住している中央区の現状を簡単に整理した上で、その打開策としてのわたしの取り組みについて紹介したいと思います。

 中央区の予算関係情報の公開状況

 さっそく、中央区の現状について見ていきたいと思います。予算関係の情報として、「予算」「執行状況」「決算」の3点からそれぞれ見てみます。結論から先に言うと、ほとんど公開されていません。多少弁護しておくと、他の自治体もそれほど変わりありません。何と言っても「オープンデータを公開しています」と胸を張っている自治体ですら、これらの情報を公開しているのはごくわずかで、さらに十分なレベルで公開している自治体はたった1箇所(神奈川県鎌倉市)しかないのですから。

予算の情報

 まずは予算です。「中央区予算(案)の概要」という資料が毎年公開されており、一部の主要な施策の予算とその簡単な説明を見ることはできます。具体的には以下のような内容が記載されています。

防災マップアプリの作成 7,274千円
災害時に区民や帰宅困難者を円滑に避難所などへ誘導するため、スマートフォンなどで閲覧できる防災マップアプリを作成する。
また、アプリのダウンロードのほか、区ホームページに速やかにアクセスできるよう、QRコードを印刷した災害情報ステッカーを作成し、Wi-Fiが整備された公共空間等に掲示する。
 * 主な機能  避難所等の開設状況と経路案内  
 * 掲載地図  防災マップ,帰宅困難者一時滞在施設マップ,洪水ハザードマップ
 * 対応言語  4カ国語(日本語,英語,中国語,韓国語) 
 * ステッカー 2,000枚

引用元) 平成29年度 当初予算(案)の概要 中央区ホームページ

 

 施策として「防災マップアプリの作成」を行おうとしており、その予算が「7,274千円」であることが分かります。また、その下にはアプリの機能や、このアプリの導入に関して必要となるものが書かれています。

 このような形で予算における個々の施策の中身が具体的に示されていれば非常に分かりやすいのですが、残念ながらこの概要に含まれないものは「社会福祉費」「土木費」「学校教育費」などといった「項」と呼ばれる大雑把な括りでの内訳しか見ることができません。具体的なイメージは以下です。正直、漠然とし過ぎて何が何だか分かりません。 

f:id:ninofku:20170430141143p:plain

引用元) 平成29年度 当初予算(案)の概要 中央区ホームページ

 

 これ以外に中央区の情報公開コーナーや図書館に行けば「予算書」という文書が閲覧可能です。この資料は「予算(案)の概要」のように施策の説明はないものの、予算全体の項目まで見ることができます。具体的には以下のような形式です(こちらは平成28年度の予算書の一部)。

f:id:ninofku:20170430144953p:plain

 

 上記の赤囲いの箇所で言うと、「敬老大会」という事業に「90,771千円」(約9,077万円)を費やそうとしているということです。そして、その前提として「年1回、5日間」で「9,040人」をこの催しに参加するだろうという見立てがあることが分かります。

 ちなみに、この予算書はわたしが先日より開示請求で電子ファイルとして提供を依頼していたものです(開示はしないものの、情報提供は可能というよく分からない理屈で、PDF形式では提供していただきました)。なぜ開示請求をしたかと言えば、予算全体の内容を把握することのできる貴重な資料であるにもかかわらず、限られ場所で閲覧のみしかできず、まともに公開されているとは言えない状況であるためです。

執行状況の情報

 次に執行状況の情報です。思いつくのは契約や調達に関する情報です。中央区のWebサイトを眺める限り、契約・入札に関するページはあるのですが、なぜかWebサイトでは「工事案件」しか掲載していません。工事案件については、以下のように入札件名や参加業者、入札額等の情報を見ることができます。

f:id:ninofku:20170430143844p:plain

引用元) 入札経過結果表 中央区ホームページ

 

 この工事案件以外は窓口で閲覧はできるようなので、今後また情報公開請求を行おうと思っています

決算の情報

  決算については予算における概要の情報もなく、単に「項」ごとの金額の羅列があるだけです。

f:id:ninofku:20170430144247p:plain

引用元) 平成27年度中央区各会計決算 中央区ホームページ

 

 なお、予算と同様に中央区の情報公開コーナーや図書館に行けば「決算書」という文書が閲覧可能です。この資料はやはり予算書とほぼ同様の形式で、個々のカテゴリの中でどういった支出が具体的に行われたのかについて見ることができます。具体的には以下のような形式です(こちらは平成27年度の決算書の一部)

f:id:ninofku:20170430144907p:plain

 

 上記の赤囲いの場所で言えば、「敬老大会」という催しを「明治座」で行い、「7,139人」が参加して「73,246,919円」(約7,324万円)を支出したことが分かります。なお、この決算書も以前に開示請求を依頼していたもので、こちらも情報提供という形でPDF形式のファイルは提供いただきました。

オープンデータについて

 一応オープンデータについても触れておきます。中央区ではオープンデータという取り組みを一切行っておりませんので、オープンデータに該当するデータがそもそもありません。したがって、予算等に係るオープンデータも当然存在しません。

 

最後に

 今回は中央区の予算等に関する情報の公開状況について紹介してきました。見ていただいて理解できるとおり、極めて残念な状況と言わざるを得ません。この状況に対して、わたしは個人としてできることはないかと考え、ぼちぼちながら行動してきました。ようやくその結果が出てきましたので、次の記事で具体的に書こうと思います。

 

Copyright © 2016-2018 東京の中央区で、子育てしながら行政について行政について考える行政について考えるブログ All rights reserved.