【保存版】東京23区で本当に保育園に入りやすい(入りにくい)区はどこなのか、過去7年分のデータから分析してみました。

赤ちゃんを抱っこする夫婦のイラスト

 こんにちは、ほづみゆうきです。これから子どもが生まれる、もしくはもうすでに生まれたパパママにとって、何より気がかりなのは保育園に入れるかどうかという問題です。子どもが保育園に入れなければどちらかが復職できないことはもちろん、さらには退職せざるを得ない状況に追い込まれる可能性もあります。

 

 このようなパパママにとって、どの自治体であれば保育園に入ることができるのか、という情報は喉から手が出るほど欲しい情報かと思います。わたしもかつてはその1人でした。妻の出産を機に引っ越すことになったのですが、どこの自治体であれば保育園に入りやすいのかという情報を散々探したものの結局よく分からず、結果的に待機児童になりかける羽目になりました。

 

 このような苦労を自分も経験したことから、今回は東京23区の中で東京23区で保育園をはじめとする保育サービス全般について利用しやすい(しにくい)区はどこなのかについて過去7年間のデータを元に情報提供したいと思います*1

前提:「保育サービス充足指数」とは何か?

 本題に入る前に、今回の調査で利用している「保育サービス充足指数」について説明しておきます。これは、自治体間での保育サービスの利用しやすさ(保育園への入りやすさ)ををある程度正確に測るためにわたしが独自に作った指数です。それほど難しい計算ではありません。以下のとおりです。

「保育サービス充足指数」
= 100 − ( (待機児童数 ÷ (保育サービス利用児童数 + 待機児童数) × 500)

※ 「保育サービス利用児童数」は、認可保育所保育ママなどの種類を問わず保育サービスを利用している子どもの数。

 ざっくり言うと、保育サービスを利用したい人がどの程度利用できているかを割合で示したものです。いくつか例示してみると、こんな感じです。

保育サービス充足指数が「100」である

 → 4月時点での待機児童がゼロ

保育サービス充足指数が「90」以上である

 → 4月時点での待機児童の割合が利用者と利用希望者全体のうちの2%以下

保育サービス充足指数が「75」以下である

 → 4月時点での待機児童の割合が利用者と利用希望者全体のうちの5%以上

 

 この指数のポイントの一つは、単純な待機児童の数ではなく、利用者と利用希望者に対する待機児童の割合を見ることで、各区の規模の差異を平準化している点です。単純な待機児童数だけで、保育園に入りやすい、入りにくいを判断することはできません。たとえば、100万人の自治体で100人の待機児童、10万人の自治体で50人の待機児童が出た場合、単純な数では前者の方が多いものの、深刻度は後者の方が高いです。

 一般的な報道ではどうしても「待機児童数」にばかり着目され、そうすると23区で言うと世田谷区ばかりが問題視されますが、中央区のような小規模な自治体の問題は無視されてしまうことになってしまいます。利用者と利用希望者に対する待機児童の割合を見ることで、この点を補正することができます*2

 もう一つのポイントは、見た目の分かりやすさです。保育サービスが完全に充足している( = 4月1日時点で待機児童が存在しない)場合には「100」という値になり、数が増えていくにつれて指数が下がっていきます。全体のうちで待機児童数が10%である場合に指数は「50」になるように設定しています。指数が「50」であるということはすなわち、その自治体において保育サービスの利用を希望する子ども全体の10%がいずれの保育サービスも利用できない状態であったということです。

東京23区で保育園に入りやすい(入りにくい)区はどこか?

 ということで、さっそく本題の調査結果の公開です。

区ごとの指数ランキング結果

 各年度での区ごとの「保育サービス充足指数」を並べて順位付けした表です。指数については細々と書きましたが、指数が高ければ「保育園に入りやすい」、指数が低ければ「保育園に入りにくい」くらいの理解でもオッケーです。リストは右にスライドすると最新の結果が表示されます。

  過去7年間のこれらの指数の傾向を見て、入りやすいと判断した区は区名を赤字、入りにくいと判断した区は青字で記載しています。

 

ランキングの考察:結局どこが入りやすくて、どこが入りにくいの?

 ランキングとしては上記のとおりですが、考察として、入りやすいと判断した区と入りにくいと判断した区のそれぞれと、簡単に判断に至った理由を記載しておきます。

<保育園に入りやすい区>

千代田区5年連続で100を達成。今回は100割れだがそれでも上位)

・新宿区(直近4年で常に95以上を維持し、さらに向上傾向にある)

・杉並区(7年間改善し続けており2018年にゼロ達成、2019年も維持)

・豊島区(年々目覚ましく改善し2017年にゼロ達成、今回は100割れだがそれでも上位)

練馬区(7年間改善し続けており、安定して90後半を維持)

葛飾(直近5年で指数は上昇傾向、安定して90後半を維持)

 

<保育園に入りにくい区>

中央区(過去7年で常に最底辺クラス、他区が改善する一方で大きく改善することもなく2019年についに最下位に。)

台東区(2016〜2018年で指数が悪化、ただし2019年は改善)

・世田谷区(過去7年で常に最底辺クラス、ただし近年改善傾向あり)

・渋谷区(継続して悪化傾向にあり、ただし29年度には若干改善)

・中野区(過去7年で常に最底辺クラス、ただし近年改善傾向あり) 

 

補足:今回の調査の前提情報

今回の調査で用いたデータについて

 今回の調査で用いたデータは東京都が集計しているものです。東京都では「都内の保育サービスの状況|東京都」という報道発表を毎年行っています。この中で都内の各自治体の保育サービスの状況(対象となる就学前児童や待機児童の数など)を集計してくれています。

<参照元の東京都のデータ>

以下のリンク先のページにある「表4 区市町村別の状況」が参照元のデータです。とりあえずということで7年分のデータを見てみました。

2019年度(平成31年度)4月時点:都内の保育サービスの状況|東京都

 2018年度(平成30年度)4月時点:都内の保育サービスの状況|東京都

 2017年度(平成29年度)4月時点:都内の保育サービスの状況|東京都

2016年度(平成28年度)4月時点:都内の保育サービスの状況について|東京都

2015年度(平成27年度)4月時点:都内の保育サービスの状況について|東京都

2014年度(平成26年度)4月時点:都内の保育サービスの状況について|東京都

2013年度(平成25年度)4月時点:都内の保育サービスの状況について|東京都

考慮できていない点

 素人がとりあえず作ってみたものですので色々と考慮不足の点はあるかと思いますが、一つ明確に考慮していない点をあらかじめ示しておきます。それは個々の自治体での点数調整の内容です。保育園の応募にあたっては希望者多数の場合には親の勤務状況などを点数化して、その上位から保育園への入園が決まるような仕組みとなっています。この点数の配分の仕方は概ね自治体で共通ではあるものの、細かいところでは異なっています。この自治体の点数配分によっては同じ勤務状況の人でも保育サービスの利用しやすさは有利になったり不利になったりします。したがって、この指数はあくまで目安の数字として捉えていただき、詳細についてはそれぞれの自治体の点数調整の中身を考慮した上でご判断いただければと思います。

 また、いわゆる隠れ待機児童については計算に含めておりません。一般的に言われる待機児童以外にも、保育サービスを利用できていない人たちがおりまして、これらの数を含めるとまた少し順位が異なってくる可能性があります*3

最後に

 今回のような内容を書く趣旨としては、わたし自身が初めての子供を授かって、かつ引越しが必要となる状況に置かれた時に、どの自治体に行けば保育園に入ることができるのかという情報が見つけられなかったためです。元々妻は働いており、産後も継続して働くことを希望していたので、引越し先の要件としての優先順位として保育園に入りやすいという要素は必須と考えていたものの、どの自治体が入りやすいのかについての情報は結局よく分からないままでした(そして、結果的に「入りにくい区」に来ていたことが今回の調査で分かりました。。)。

 情報が全くないわけではないのです。むしろ、情報は溢れていると言って良い状態です。それにもかかわらず欲しいと思える情報が手に入らなかったのは、あまり価値があるとは思われない情報が山ほど存在しているためです。この件に限らず、インターネット上で性格で有用な情報を手に入れることは年々困難になっていると言われています。

 今回の記事が保育サービスを希望される方にとってどの程度役に立つかは分かりませんが、少なくともわたしがこれまで見てきた情報への問題点は考慮した上で作成したつもりです。この情報が皆さんの情報収集に役立ち、「保活」という無駄きわまりない活動が少しでも効率的に行えることを期待しております。

 

*1:タイトルは分かりやすさを重視して「保育園」と書きましたが、厳密に言うと今回の記事で書くのは保育園に限らず「保育サービス」全般についての利用しやすさの調査です。「保育サービス」とは東京都の定義では「認可保育所認証保育所認定こども園、小規模保育事業、家庭的保育事業、事業所内保育事業、居宅訪問型保育事業、定期利用保育事業、企業主導型保育事業、区市町村単独保育施策等」とあり、要するに子どもを預けられるサービス全体を指しています。これらのサービス全てが利用できない場合に、親が復職できないもしくは離職せざるを得ないという大変な状況になることを考えると、妥当なものかと思います。

*2:世田谷区と中央区の比較についてはこちらをご覧ください。

ninofku.hatenablog.com

*3:隠れ待機児童についての考察についてはこちらをご覧ください。 

ninofku.hatenablog.com

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