先日の保育園関係の開示請求の結果が来ました。

http://3.bp.blogspot.com/-SDQ1dU-K_mE/VPQUF1a2-dI/AAAAAAAAsG4/fwsm5q5oLoU/s400/syorui_morau_woman.png

 おはようございます、ほづみゆうきです。先日紹介したとおり、以下の記事で改めて開示請求を行ったことについて書きました。 本件についての結果が昨日届いておりまして、その内容のご報告と、一部開示されたデータを公開いたします。

ninofku.hatenablog.com

開示請求の内容と結果

 今回請求した内容は以下のとおりです。

① 保育園ごと、歳児クラスごとの定員数、在籍者数、待機児童者数が分かる資料の電磁的記録(Excel等の文字情報のコピー・編集が可能なファイル形式)(対象:平成29年度2月、平成29年度10月)

② 認可保育所の申込における、申込者別の申し込んでいる歳児クラスと利用調整指数全体の合計値及びその内訳(基本指数及び個々の調整指数ごとの値)が分かる資料の電磁的記録(Excel等の文字情報のコピー・編集が可能なファイル形式(対象:平成25年〜平成29年)

 結果としては、上記の①の方は開示できることになりました。一方で②については開示できない旨の回答がありました。こちらについては下記のとおり再度審査を求める手続き、審査請求を本日行いました。この件については以下に改めて記載します。 

開示されたデータ(保育園ごとの待機児童者数)

開示されたデータについて

 今回開示された内容は、保育園ごと、歳児クラスごとに定員、在籍者数、待機児童者数に関するものです。区議会の資料として作成されたものですが、中央区のWebサイト等には公開されていないようです。定員数や在籍者数の情報については断片的ながらWebサイトにも公開されていますが、保育園ごとの待機児童者数の数字というのはこれまで公開されていない情報なので、それなりの価値はあるのかと思います。過去に1度同様の情報を開示請求していますが、今回は平成29年度10月というかなり直近の情報です。

Googleスプレッドシートで開く場合はこちらから。

中央区の保育園ごとの待機児童数

このデータの使い道

 この情報の使い道として考えられるのは、「各保育園の大まかな人気を測る」ということかと思います。待機児童数が多いということはそれだけ多くの家庭がその園に入れたいと思っているためであろうからです。平成30年度(2018年)4月の入園申し込みにあたっての参考になるかもしれません。もっとも、先日の以下の記事に書いたとおり、中央区の利用調整はあくまで「利用調整指数の点が全て」というスタンスです。優先順位を高くしたところで、利用調整指数が低ければどうやってもその保育園に入園することは適いませんので注意が必要です。利用調整指数が十分に高い人はどこに入るのかを選ぶことができますのでどの保育園が人気があるのかという情報は関心があるでしょうが、そのような方は少数派と思われます。

ninofku.hatenablog.com

 この他、何かしら別の用途で使い道があればまた記事を書きます。

不開示だったデータ(利用調整指数の分布)

不開示だったデータについて

 このデータの利用目的としては、過去の以下の記事で作成した利用調整指数の分布を公開することでした。歳児クラスごとでどの程度点数を取得されているのかを大まかに把握することができます。

ninofku.hatenablog.com

 また、歳児クラスごとの認可保育園の定員は公開されていることから、この情報と利用調整指数の分布と比較することでおおよそ何点を取れば認可保育園に入ることができるのか(入ることができないのか)を知るための極めて有用な情報となります。2015年と2016年の情報については過去に開示されていたので、この情報に基づいて以下の記事を書きました。平成30年度(2018年度)4月の応募に際して、直近の2017年の情報を取得できればと考えておりましたが、残念な結果となりました。 

ninofku.hatenablog.com

中央区区の回答

 中央区から来た不開示の理由は以下のとおりでした。

 子育て支援課が保有しているシステムは、常に最新の情報が表示されることとなっている。したがって、上記(1)から(5)までの各時点における区政情報は、電磁的記録として存在していない。

 一方、文書においては「利用調整審査名簿」を保管しているが、申込者の氏名や住所、世帯、所得などを非開示にしたとしても、利用調整指数は、これらの状況を数値化した個人に関する情報であり、 個々の記載事項が密接不可分であることから、利用調整指数全体の合計値及びその内訳を公開することにより各世帯における就労状況や生活状況等が特定され、また、歳児クラスを公開することにより、元々の募集人数が少ないところにおいては入園者の状況と照合することで、特定の個人を推測できる場合がある。

 仮に、特定の個人の識別ができなかったとしても、利用調整指数況等を数値として表していることから、名簿登載者が情報を開示されたことを知れば、精神的な苦痛を受けるおそれがある。

 したがって、中央区情報公開条例第8条第3号の「個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、 公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの。」に該当するため。

わたしの反論

  これに対し、以下のとおりの反論を書いて審査請求として区に改めて提出しました。今回はスピード重視で2時間程度で急いで書いたので多少抜け漏れがあるかもしれませんが、言いたいことは盛り込めたかと思います。

上記の内容はまったく理解しかねるものであり、このたび審査請求を行うに至った。その理由を以下に述べる。

 

(1) 個人特定の可否

 第一に、中央区は「利用調整指数は、これらの状況を数値化した個人に関する情報であり」「特定の個人を推測できる場合がある」と主張する。本件と類似の事例として、さいたま市の「名古屋高判平15年5月8日」の判決があり、当該事例においては開示対象の情報は対象者を相当範囲にまで限定する役割を果たすものであることから、当該情報が「個人識別情報に該当する」ことを認めている。しかしながら、開示請求対象の情報はあくまで点数の羅列であり、かつこの情報を用いることによって個人を特定できるような性質のものではない。すなわち、当該情報は用いることで特定の個人を相当範囲にまで限定する役割は有しないものと理解するべきであり、個人を特定することはほぼ不可能(全く不可能でないとしても、「容易に照合」することは極めて困難である)である。

 また、杉並区など一部の自治体では類似の情報をすでにWebサイト上に公開している(http://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kosodate/navi/1034782.html)。当該情報は歳児クラス別の利用調整指数だけでなく希望の保育園や内定の有無までの情報を含んでいるものであり、より特定は容易である。当該情報によって「特定の個人を推測できる」という判断があればこれらの情報は当然に公開されるはずはなく、当該情報がすでに他の自治体において広く公開されていることは、当該情報が「特定の個人を推測できる」ものではないと理解するべきである。

 これらの理由から、当該情報によって「特定の個人を推測できる場合がある」という見解は誤りである。

 

(2) 精神的苦痛の有無

 第二に、中央区は「名簿登載者が情報を開示されたことを知れば、精神的な苦痛を受けるおそれがある」と主張する。本件と類似の事例として、さいたま市の「さ情審査答申第95号」の答申書があり、当該事例においては開示を行うことによって「精神的な苦痛を与えるおそれが認められる」ことを認めている。しかしながら、このたび審査請求人が開示請求している内容は当該事例における「各個人(各家庭)の希望・意向を推認させるもの」には該当しない。開示請求の対象はあくまで利用調整指数の点数のみであり、希望園等の情報を含むものではない。(1)にも述べた通り、当該情報のみで個人を特定することは極めて困難であり、特定できない以上、精神的な苦痛を受けるおそれはないに等しい。

 また、(1)に挙げたとおり、杉並区など一部の自治体では類似の情報をすでにWebサイト上に公開している。当該情報は歳児クラス別の利用調整指数だけでなく希望の保育園や内定の有無までの情報を含んでいるものであり、より特定は容易である。当該情報によって「精神的な苦痛を受けるおそれがある」という判断があればこれらの情報は当然に公開されるはずはなく、当該情報がすでに他の自治体において広く公開されていることは、当該情報が「精神的な苦痛を受けるおそれがある」ものではないと理解するべきである。

 これらの理由から、当該情報によって「精神的な苦痛を受けるおそれがある」という見解は誤りである。

 

(3) 個人情報への該当

 第三に、中央区は審査請求人が開示を求めている情報が「個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」もしくは「特定の個人を識別することはできないが、 公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に該当すると主張する。

 「個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」という記述は、開示請求を求めている情報が個人情報保護法第二条における「個人情報」の定義に該当するということであると思われる。この定義は以下のとおりである。

 

一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。第十八条第二項において同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)

二 個人識別符号が含まれるもの

 

 開示請求対象の情報はあくまで点数の羅列であり、「氏名、生年月日その他の記述等」「により特定の個人を識別することができるもの」に該当しないことは自明である。また、「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるもの」にも該当しない。当該情報を何らかの他の情報と照合することによって、個人を特定することはほぼ不可能(全く不可能でないとしても、「容易に照合」することは極めて困難である)であるためである。

 したがって、当該情報は個人情報保護法における「個人情報」には該当するという見解は誤りである。

 また、「公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」にも同様に該当しない。当該記述は情報公開に関する法律や条例に見られるものであり、複数の中央省庁において当該記述に該当するものを例示している。

 

「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とは、個人識別性のある部分を除いたとしても、公にすることにより、財産権その他個人の正当な権利利益を害するおそれがある情報をいう。例えば、カルテなど個人の人格と密接に関係するものとして保護すべき情報や、行政機関の審議のために提供した未発表の著作物や研究計画の情報など公表前に第三者がアイデアを利用すると情報提供者の権利利益を害するおそれがある情報がこれに該当する。

人事院Webサイトより) http://www.jinji.go.jp/jyohokoukai/kijun_01.html

 

 保有個人情報の中には,匿名の作文や,無記名の個人の著作物のように,個人の人格と密接に関連したり,開示すれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものがあることから,特定の個人を識別できない場合であっても,開示することにより,なお個人の権利利益を害するおそれがある場合については,不開示とする。

法務省Webサイトより)http://www.moj.go.jp/hisho/bunsho/disclose_disclose05-06.html

 

 審査請求人が開示請求を求めている情報がこれらに該当しないことは明らかである。したがって、当該情報「公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に該当するという見解は誤りである。

 さらに、(1)に挙げたとおり、杉並区など一部の自治体では類似の情報をすでにWebサイト上に公開している。当該情報は歳児クラス別の利用調整指数だけでなく希望の保育園や内定の有無までの情報を含んでいるものであり、より特定は容易である。当該情報が「個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」もしくは「特定の個人を識別することはできないが、 公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に該当するという判断があればこれらの情報は当然に公開されるはずはなく、当該情報がすでに他の自治体において広く公開されていることは、当該情報が上記の記述のいずれにも該当しないものではないと理解するべきである。

 

 以上3点のとおり、中央区の主張はいずれも誤りであり、審査請求人の当該開示請求を「非開示とする」という決定を取り消すべきである。

今後の展開

 以前に以下のような図を作りましたが、この(3)に当たる部分です。これに対して区は開示の判断を行うか、やはり開示できないということで弁明書を出すかということになります。中央区には積極的な開示をお願いしたいと考えています。

f:id:ninofku:20171102080629p:plain

 

最後に

 今回は開示請求の結果と開示されたデータの公開、そして今後の展開について書いてきました。今回の開示請求で地味に嬉しかったのは、開示された保育園ごとの待機児童数のデータについて、中央区から提供された形式がExcelであったことです。これまではわざわざ紙媒体を改めてスキャンして作成したPDFなどを提供されていたので、そこからすると大きな進歩です。上記の反論で書いたとおり不開示にすることはとても合理的であるとは思えませんので、この調子で不開示だったデータについても開示をお願いできればと思います。何かしら動きがありましたらまたお知らせいたします。

Copyright © 2016-2018 東京の中央区で、子育てしながら行政について行政について考える行政について考えるブログ All rights reserved.