日本橋上の首都高速道路の地下化の是非について考えてみました。

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 大変ご無沙汰しておりました。最近はブログに割くだけの時間がなく、前回の更新から随分と間が空いてしまいました。多少はマシになりましたので、今後はこれまでと同程度の頻度で投稿していけるのではないかと考えておいます。

 さて、本日のテーマは、日本橋上の首都高の地下化についてです(ちなみにトップ画像は、橋繋がりで全然関係ない瀬戸大橋。)。子育て関係の記事ばかりを最近は投稿していましたが、このブログとしてはわたしが在住している中央区の行政全般についても考えていきたいと思っており、今回は久々にこちらの方のテーマとなります。

 日本橋上の首都高の地下化については、2018年7月18日に様々な機関からニュースが流れました。参考に一つ朝日新聞の記事を挙げます。

国指定重要文化財日本橋(東京都中央区)の上を走る首都高速道路の地下移設について、国土交通省などでつくる検討会は18日、総事業費を3200億円とする計画で合意した。2020年の東京五輪後に着工し、地下化まで10~20年かかる見通しだ。

日本橋首都高、地下化3200億円計画合意 五輪後着工:朝日新聞デジタル

 

 日本橋上の首都高を地下化しようという話自体は随分前からある話ではあるのですが、今回このような報道がされたのは、国土交通省らで構成されている「首都高日本橋地下化検討会」の第3回*1において地下化にあたっての総事業費の概算額と、関係者間での費用負担が初めて公開されたためです。関係者間で合意したということなので、よほどの問題がない限りはこの案で決定、ということで様々な媒体に取り上げられたものと思われます。

 この方針決定に対しては、「税金の無駄遣い」、「3200億円も費やすのであれば全国の学校にエアコンを入れてくれ」、「日本橋の上空だけ首都高がなくなっても意味が無い」といったネガティブな意見が多く見られました。わたしがこのニュースを初めて見たときの感触もほぼ同じようなものでした。元々橋の上にあった道路を地下に移設するという工事だけで3200億円の税金が使われるというのであれば、こんな無駄なことはありません。ただ、印象だけで判断するのもまずかろうということで色々な情報を拾い集めてみると、細かい部分の検証は必要であるものの、むしろ結構ありなのではないかと思うようになりました。

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日本橋上の首都高地下化を考えるにあたって考慮すべき点

 この日本橋上の首都高の地下化の是非を考えるにあたって、とりあえずわたしが考慮するべきと考える点は以下の3点です。これらのそれぞれの点についてデータも示しつつ説明していきます。

 

1. 首都高地下化の発端と本当のコスト

2. 税金での負担の範囲

3. 周辺地域の再開発の存在

 

1. 首都高地下化の発端と本当のコスト

Q1. 「地下化」を実現するために必要となるコストが3,200億円なのか?
A1. そうではない。首都高は老朽化しているためいずれにせよ更新は必須で、このコストは1,000億円見込まれているため。したがって、「地下化」の本当のコストは2,200億円。

 まず、「地下化に要するコストが3,200億円」ということでこの3,200億円という数字があちらこちらで繰り返されておりますが、これがまずおかしな話です。元々の議論の発端は首都高速道路の老朽化による更新であるためです。したがって、今回の議論で本来比較しなければならないのは「地下化をするか、しないか」の2択ではなく、「現状のまま更新するか、地下化をするか」の2択です(いっそのことなくしてしまえという議論もあるようですが*2)。

 現状のまま(日本橋の上のまま)に首都高を更新する場合の費用はこの区間で1,000億円とされており、一方で日本橋上の首都高の地下化に必要となる費用は3,200億円です。つまり、この地下化を行うにあたって追加で必要となるコストは2,200億円であり、この2,200億円を払うだけの価値があるかどうかというのが議論の出発点です

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2. 税金での負担の範囲

Q2. 地下化の費用は全て国や都が支払うのか?
A2. そうではない。地下化に必要となるコスト2,200億円のうち、1,400億円は首都高を運営する首都高速道路株式会社が賄う。自治体が支払うのは約400億円、このうち東京都が320億円、中央区が80億円を支払うこととなっている。

 こちらも多くの方が誤解されているように思われますが、地下化のために要する費用2,200億円を全て国や都が税金で負担するわけではありません。以下の図は第3回 首都高日本橋地下化検討会*3での配付資料の一部で、今回の地下化によって必要となる概算事業費3,200億円のうちでの各者のコストの負担額分が示されています。

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 上記のスライドでは省略されていますが、報道によれば「地方自治体」での内訳は東京都が320億円、中央区が80億円となっています。また、日本橋付近の再開発を行っている事業者も一部を負担することになっています。

 なお、「国・地方自治体の出資金制度」というものがよく分からなかったのですが、少々調べてみると首都高が道路を整備するにあたって国・地方に対してお金を借りるという仕組みであるようです。国・地方はあくまで貸すだけなので、これについても税金での負担はありません。

 高速道路の早急な整備には集中して多額の投資を必要とするため、その整備に当たっては、財政融資資金等の借入金及び国・地方からの出資金(以下「借入金等」という)で建設を行い、利用者からの通行料金により管理費と支払利息等をまかないつつ借入金等を一定の期間(料金徴収期間)内に返済していく、いわゆる有料道路制度を活用しています。
 この制度の活用により、首都圏の交通渋滞解消や都市の再生等を図る上で根幹となる社会基盤として、首都高速道路の建設・管理が行われています。

首都高速道路事業と経理の特徴より

 これらを踏まえると、日本橋上の首都高の地下化を実現するためのコスト各者での分担は以下のとおりです。東京都、そして日本橋のある中央区も一部負担しますが、全てを負担するわけではありません。したがって、税金の使い道の観点からの議論としては、東京都としては320億円、中央区としては80億円の税金をこのプロジェクトに費やす価値があるのかどうかという点が次のステップです。

首都高:1400億円

民間プロジェクト:400億円

東京都:320億円

中央区:80億円 

3. 周辺地域の再開発の存在

Q3. 日本橋の上の高速道路だけがなくなったとしても、周辺の景観が変わらないのであれば意味がないのではないか?
A3. そうではない。日本橋周辺の環境の再開発が計画されており、行政や地元も含めた組織体制の構築も併せて検討されている。

 3点目です。日本橋の上の部分だけが地下化しただけで景観が良くなるわけではないのだから、わざわざ地下化しても意味が無いという声も多く聞こえます。これも一見もっともな意見ですが、実際のところはそうではありません。この日本橋付近のエリアは「都市再生特別地区」として選定されており、民間事業者による再開発が検討されています。 以下の赤の点線で囲われている部分が対象のエリアです。

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 計画の現状もWeb上に公開されています。国家戦略特別区域会議の東京都都市再生分科会の第12回の資料に「都市再生特別地区(日本橋一丁目中地区)都市計画の概要」*4という資料があります。この都市計画の資料を作成しているのは三井不動産野村不動産

 詳細は上記の資料を見ていただくとして、イメージ図として示されているのが以下の画像です。もちろんイメージなのでそっくりそのまま同じものができる保証はありませんが、単に川の上の高速道路を取り除くだけではなく、日本橋周辺の景観を含めて大々的に整備し直そうという意思は見られます。ちなみに、現状ではこのイメージ図の川の上部を覆うように首都高は走っていますので、この絵は日本橋上部の高速道路が全て取り除かれることを前提として描かれているものです。f:id:ninofku:20180730001951p:plain

 また、単に民間事業者がこれらの再開発を行うだけではなく、行政や地元も含めた組織体制((仮)日本橋川沿いエリアマネジメント)を作ることで景観や防災など、様々な観点からの連携を行うようにもなっています。これらの組織体制による取組が本当にうまく行くのかという点はありますが、少なくとも現時点において「単に日本橋の上部だけが地下化される」というわけではないのです。 

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最後に

 今回は、日本橋の首都高の地下化の議論について、調べてみました。最初にニュースを見たときにはネット上の多くの声と同じようにこれほどの費用をかけてまでやるものなのかと感じましたが、上記に挙げたような点を踏まえると、わたしとしてはそれほどこの計画も悪くないものと感じるようになりました。首都高は老朽化から更新が求められており、かつ周辺で再開発も行われようとしている状況です。上空の首都高を取り除くためには千載一遇のチャンスであって、この機会を逃すとまた次の更新の時期を待たなくてはなりません。 自治体としては一時的な費用負担はあるにせよ、大部分は首都高や再開発業者に負担してもらって、新たな観光資源を獲得できるという旨みがあります。

 ということで、わたしとしては日本橋上の首都高の地下化についてはどちらかと言うと賛成の立場です。ただし、今回の計画や費用負担について一切文句がないわけではありません。何よりも問題と考えるのは、東京都や中央区から今回発表された費用負担についての説明が何もないことです。それぞれのWebサイトを確認してみましたが、中央区では何の資料も公開されていません。東京都の方は検討会の開催とその資料を公開しているだけ。小池都知事の会見で触れている場面はありますがどこか他人事で、都として相応の額の支出を決定したという意識というか覚悟があるとはとても思えません。

(前略)

日本の場合。ということは、もう景観などは無視をしているということであります。景観だけではありませんけれども、やはり都市の機能をより確実にするとか、そういった面から、今回、地元の方々がずっと訴えてこられた、この日本橋、あの地域の首都高の地下化ということがより具体的に進む。金額については、さまざまな工法、工夫が必要かと思います。「3,200億も使うんだったら、こっちに使ったほうが良い」と必ず出てきますからね。
一つ、私は以前からそういう運動を、小泉政権の頃からあったと思いますけれども、私は一つ、それをやってみる価値もあろうかな。
(後略)

 

小池知事「知事の部屋」/記者会見(平成30年7月27日)|東京都

 

 この決定によって、東京都は320億円、中央区は80億円の税金を支出することになります。報道されている3,200億円に比べれば当然に額としては少ないものの、決して少ない金額ではありません。東京都と中央区、それぞれ2018年度の一般会計予算全体と今回の地下化の分担額を比較してみたのが以下のグラフです。東京都では全体の予算の0.5%、中央区では全体の予算の8.2%を占めることになります(もちろん1年でこの金額を丸々支払うわけではないので負担の規模感を把握するためのもの)。

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 今回の決定によってこれだけの規模の予算を費やすことがほぼ決定したにもかかわらず、ほとんど何の説明もないというのはあまりに都民、区民を馬鹿にした話で不親切では無いかと感じます。どのような考え方に基づいてこのような提案があり、どのように考えてこの分担案に合意したのか?そのように判断した理由は何なのか?支払う金額以上の便益(観光客の増加による消費増や周辺地域の地下高騰など、ひいては税収増)は得られる算段があるのか?ざっと思い付くだけでも色々と不明な点は挙げられますが、これらについて自治体側からは何の説明もないのです 

 わたしがこの点について懸念するのは、不確かな合意の上に成り立つ決定は簡単に反故にされかねないと考えるためです。「由らしむべし知らしむべからず*5」的に住民に十分な情報を与えずに行政が大きな事業を行うことが、現代においては大きなリスクを孕むことになることにそろそろ関係者は気付くべきではないでしょうか。その理由は、拡散性が非常に強力なSNSの普及です。普及したがゆえにSNSの枠だけに止まらずその内容がテレビなどの旧来メディアでも取り上げられるようになっており、世論を動かす大きな力となっているためです。現時点では他人事のような扱いであるにしても、何かしら計画上で問題が生じて世論の多数派が反対の方向に傾いた途端にそれに迎合し政争や選挙のネタに仕立て上げるような政治家が出てこないとは限りません。それによって元々の計画が混乱して遅延するようなことになれば、その負担を被るのは都民、区民となってしまうかもしれません。

 今回のような大きな事業を進めるにあたっては関係者や地域の住民に定期的に情報提供を行い、着実に合意形成を行っていくべきでしょう。もちろん、そのためには住民の側もその情報を一方的に受け入れるだけでなく、自分たちで咀嚼して考える姿勢も重要です。また、主義主張に凝り固まって、相手側の意見を結論ありきで批判するといったことは控えていくべきです。わたし自身もまだまだ偉そうなことが言える立場ではありませんので、日々様々な問題に考え、時にはブログという形でその思考の過程もお見せする中で、できる限り多くの方が自治体の行政について考える何らかのきっかけになれたらと考えているところです。

 
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