中央区の待機児童問題は、世田谷区よりも深刻であることをデータからお示しします。
おはようございます。ほづみゆうきです。先日の区政にチャレンジする旨の記事は、思った以上の反響をいただきまして、身の引き締まる思いです。限られた期間ではありますが、悔いの残らないよう地道に活動していきたいと思います。
その記事でも大きく触れましたが、わたしの解決したい課題の一つは待機児童の問題です。待機児童の問題というのは、単に子どもが預けられないというだけで完結する問題ではありません。最悪の場合、どちらかの親が職を失いかねないという問題です。それは家庭にとっては経済的な安定性を失うことで、そればかりではなくこれまでのキャリアを捨てるという意味で親の個人としての尊厳を失わせること、さらには社会にとっても人不足と言われる世の中で労働力が減るという意味で大きな損失となるものです。この問題の中央区における現状と他の区(特に世田谷区)との比較をお示しする中で、中央区の深刻さをもう少し詳細にお示しします。
<告知>
はじめての集会を行いますので、最後にその告知です。会場ではわたしの区政に対する思いをお伝えするとともに、 参加いただく皆さんの率直な区政への思いをお聞かせいただきたいと考えております。和室です。子連れ歓迎です。途中参加、 中抜け自由です。開催まで1週間もなく、 かつ年度末も年度末でお忙しいところかと思いますが、 ぜひご参加いただけますと幸いです。
中央区の待機児童の現状はどうなっているのか?
まずは中央区の待機児童数の直近4年間の推移を見てみます。こちらは東京都の発表による各年の4月時点での待機児童数をグラフ化したものです*1
こちらを見ると、2017年までは上昇してきたけれども、2018年で大きく減っているようにも見えます。問題だと言うけれども、意外に中央区は頑張っているようにも見えます。
待機児童の他の区との比較
本当に改善しているかどうかは、他の区と比較しなければなりません。ということで、同様のデータで東京23区の待機児童数をグラフ化したのが以下です。
単純な数字で言うと上位7位。23区のうち、7番目に待機児童が多い区です。前年度から大きく減っているようにも見えますが、この時点で決して待機児童の少ない自治体ではないことが分かります。ちなみに、2017年度もついでに掲載しておくと、こちらも同じ7位です。単純な数字という意味では324から188と減っていますが、他の区と同等程度頑張ったという程度であり、中央区が特別頑張っているわけではないのです。
それにしても全体で23区のうちで7位ということであればそれほど極端に悪いわけではないと思われるかもしれません。待機児童に関する報道でも、中央区が取り上げられるということはあまり聞いたことがありません。よくあるのは上記のグラフでも2年連続で待機児童数がトップである世田谷区です。ちなみに、世田谷区は過去6年さかのぼっても常に待機児童数はトップです。
しかし、実際はそんなことないのです。中央区は世田谷区よりも保育園に入りにくい区です。23区でワースト3です。この点について説明いたします。
世田谷区との比較による中央区の待機児童の深刻さ
よくある報道では「待機児童数」、つまり待機児童の数だけで良し悪しを判断されるので人口の少ない中央区はあまり目立ちませんが、利用希望者の数に対する待機児童数の割合を見極めるためにわたしが作成した指数で比較してみると、中央区の保育園hへの入りやすさは6年間ほぼずっと最下位クラスなのです。順番に説明していきます。
待機児童数の推移
まずは、待機児童数の推移から。上に紹介したグラフと同様で、世田谷区の待機児童数は圧倒的に多いです。
人口と、子どもの数の推移
しかし、考慮しなければいけない点は、当たり前のことではありますが自治体によって人口は大きく異なるし、したがって、子どもの数は大きく異なる、ということです。世田谷区と中央区では人口はまったく異なります。2019年3月時点で言うと、人口は1/5以下です。
したがって、子どもの数も大きく異なります。次のグラフは保育園をはじめとした保育サービスを利用している子どもの数の6年分の推移です。当然人口が多い分だけ、世田谷区の方が利用している子どもの数も多いことが分かります。
となると、単純な待機児童数だけでは本当に入りやすいのかを測ることはできないことが理解できるかと思います。自治体によって、上記のとおり母数がまったく異なるためです。この入りやすさを正しく測るために考えなければならないのは、保育サービスを利用したいという人のうち、どの程度の人が入ることができているのか(入れていないのか)という割合です。
待機児童の割合の推移
この「割合」という観点で作成したのが以下のグラフです。保育サービスの利用を希望する子どもたちのうち、どの程度の子どもが待機児童になっているかを示したものです。
これまでのグラフでは圧倒的に世田谷区の方が数字が悪いように見えていましたが、この割合で見るとほぼ拮抗しているのが分かります。そして、直近3年で見ると中央区は世田谷区よりも待機児童の割合が多いのです。これが、わたしが中央区は保育園に入りにくい区だと言う根拠です。
客観的に評価するための指数、保育サービス充足指数
この考え方を元に、割合だと若干分かりにくい部分もあるので以下のような指数を独自に作ってみています。
「保育サービス充足指数」
= 100 − ((待機児童数 ÷ (保育サービス利用児童数 + 待機児童数) × 500)
この指数のポイントの一つは、待機児童の数を保育サービスの現在の利用者を含めた子どもの数全体の中でどの程度の割合を占めるのかを考慮に入れている点です。単純な待機児童数だけを見てしまうと、子どもの数が多い自治体は不利になってしまいます。他方、子どもの少ない自治体は実態よりも良い結果のように映ってしまうという問題もあります。保育サービスを利用する子どもも含めたサービスを希望する子どもの数全体を母数とすることで、この点を平準化していることが一つのポイントです。
もう一つのポイントは、見た目の分かりやすさです。保育サービスが完全に充足している( = 4月1日時点で待機児童が存在しない)場合には「100」という値になり、数が増えていくにつれて指数が下がっていきます。全体のうちで待機児童数が10%である場合に指数は「50」になるように設定しています。指数が「50」であるということはすなわち、その自治体において保育サービスの利用を希望する子ども全体の10%がいずれの保育サービスも利用できない状態であったということです。
各年度での区ごとの「保育サービス充足指数」を並べて順位付けした表です。指数が90以上である年度は「入りやすい」と判断し、指数と順位の箇所を赤字にしています。一方、指数が75以下である年度は「入りにくい」と判断し、指数と順位の箇所を青字にしています。なお、指数のそれぞれの意味は以下のとおりです。あくまで入りやすさの指標であり、指数「100」以外は少なからず待機児童が出ていることに変わりはありませんのでご注意ください。
保育サービス充足指数が「90」以上である
→ 4月時点での待機児童の割合が希望者全体のうちの2%以下である
保育サービス充足指数が「75」以下である
→ 4月時点での待機児童の割合が希望者全体のうちの5%以上である
こちらも見ると分かりますが、全ての自治体でそれなりに待機児童対策は進んでいます。直近の2018年4月時点のデータでは、青字の区、つまり待機児童の割合が5%を超えるのは台東区だけでした。特に目覚ましい改善を行っているのは豊島区です。6年前には23区中最下位でしたが、2018年には待機児童ゼロを達成しています。
これらの中で中央区はどうかというと、ほぼ常に最下位圏です。直近の順位としては「19位 → 22位 → 21位」という状況です。わたしはこのような現状認識から、一刻も早く中央区での待機児童を解消したいと考えています。
最後に
今回は、中央区の待機児童問題がどの程度深刻であるのかについて書いてきました。 元々、今回のような内容を調べた趣旨としては、わたし自身が初めての子供を授かって、かつ引越しが必要となる状況に置かれた時に、どの自治体に行けば保育園に入ることができるのかという情報が見つけられなかったためです。元々妻は働いており、産後も継続して働くことを希望していたので、引越し先の要件としての優先順位として保育園に入りやすいという要素は必須と考えていたものの、どの自治体が入りやすいのかについての情報は結局よく分からないままでした(そして、結果的に「入りにくい区」に来ていたことがこの調査で分かりました)。
世間でも待機児童の問題はかなり浸透してきた感があります。しかし、単純な数での報道があまりにも多く、このような伝えられ方では今回紹介してきた中央区のように、小規模な自治体での深刻さが埋もれてしまうという問題があります。わたしは今回のように他の自治体との比較や全体における割合など、客観的なデータを用いて多面的な観点からこの問題を捉え、行政に対して問題の深刻さとその改善を求めていきたいと考えています。
*1:最新の2018年のデータはこちらから。以下のデータもすべて同じ。