落選報告。今回の選挙戦でのチャレンジとその思いについて。
おはようございます。ほづみゆうきです。残念ながら、中央区議会議員選挙に立候補しましたが、力及ばず落選しました。ただ、多くの方々に支えていただくことで、ここまで来ることができました。本当にありがとうございます。
精神的にも身体的にもいろいろと疲れたこともあり数日沈黙しておりましたが、頭の整理も兼ねて、今回の選挙戦について振り返ってみたいと思います。
わたしが行ったチャレンジについて
結果の報告の前に、まずは今回の選挙戦におけるわたしの取り組みについておさらいしておきます。立候補する宣言を行った記事に経緯は詳しく書きましたが*1、既存の選挙のやり方に色々と疑問があったことから、今回の選挙戦でわたしは色々とチャレンジをしておりました。
① 働きながら、子育てしながら活動を行う(ながら選挙)
② 選挙カー、拡声器を使用しない(騒音レス選挙)
③ インターネット上での発信に注力する(ネット選挙)
④ できる限り、活動のコストを抑える(ほぼゼロ円選挙)
選挙カーの部分のみがわりと着目されたのですが、そればかりではないのです。
騒音レスな選挙を目指すため、ムダな公費負担をなくすため、選挙カーは使いません。しかし、そうするとどこにいるか分からない、活動しているかどうかも分からないという声も。
— ほづみゆうき@中央区から待機児童をなくすために活動中 (@ninofku) April 14, 2019
なので、活動中は位置情報を配信します。会ってみたいという方がおられたらぜひお近くにどうぞhttps://t.co/awRpvEekFN
これ以外にも実際選挙戦を進めていくにあたって、一般の候補者と異なると気付いたポイントとしてはこういった点も挙げられます。
⑤ 既存の政党に属さない
既存の政党には属さず、無所属の立場で活動を行っておりました。政党に入れば選挙活動における人員やノウハウの支援も得られる上、組織票もありますが、それは結局当選後に政党に対して忠誠を誓わせるためのエサでしかありません。政党の意向に左右されず、自身の考えに基づいて行動できるようにするためです。
⑥ 印刷物やWebサイトはほぼ全て自作する内容はもちろんのこと、デザインやレイアウトも含め、印刷物やWebサイトは自作しました。これは、コストを抑えるという点に加えて、発信力も政治家としての能力であろうと考えるためです*2。
⑦ 出馬表明から投票日まで1ヶ月という短期決戦
出馬の意思を表明したのが3月22日で、投票日が4月21日で、その期間は1ヶ月程度しかありませんでした。
これらのチャレンジで目指していたもの
自分で列記していて改めて感じますが、色々と無謀なチャレンジです。これらのチャレンジを行うことで目指していたものは、これまでの選挙活動の当たり前に対して一石を投じることでした。わたし自身、もともと関心がありつつも1度政治の道を諦めたのは、あまりにも旧態依然としていて候補者に大量の時間を消耗させる、選挙に当選するためだけの活動に違和感を持ったためでした。
もっと具体的に言うと、目指していたのは世の中の問題を本当に解決したいと思う人間が政治家を目指すにあたってのハードルを下げることでした。「政治家として優れている人間が選挙に勝つとは限らない」というのが選挙界隈での「常識」です。そして、この選挙(及び選挙活動)がハードルとなって能力のある人が政治を目指さない(目指したとしても勝てない)という現実があり、この「常識」が日本の政治家の資質のボトルネックとなっているように思えました。したがって、この「常識」を何とか変えたいと考えるに至ったのでした。
チャレンジの内容は、以下の2点に大きく分類されます。
政治家としての活動に関わる本質的な部分の発信に注力するということ
本質的な活動への注力
1つは、政治家としての本質的な活動に注力するという点です。それは自身の行政に対する思いや政策についての発信です。たとえば待機児童を解消したいとか、行政に対して何らかの強い思いがあるからこそ政治家を目指すのでしょうから、当然発信するべき内容はあるはずです。これをブログなりSNSなりで発信することは大前提です。
インターネットのみに必ずしもこだわる必要性はありませんが、時間を問わず発信できること、コンテンツが残り続けることから、紙媒体だったり、その場限りの演説会のようなものよりは優位性があると考えます。ここから導き出されたのが上記の「③ ネット選挙」です。
また、「⑥ 印刷物やWebサイトはほぼ全て自作する」というのも、本質的な活動とわたしは整理しています。たとえば当選した後に議会において自身の意見や政策を他の人たちに論理的に整理して伝えるということ、区民に対して活動内容をレポートとして作成して報告するということは、政治家として不可欠な能力であると考えるためです
*3。
それ以外の活動について
他方で、本質的な活動に注力するということは、それ以外の活動はできる限り行わないということでもあります。たとえば単に顔と名前を覚えてもらうために始発終電の駅に立つといったようなことです。また、同様の目的のために使われている選挙カーなども一切使用しません。この点から導き出されるのが「② 騒音レス選挙」 です。
この他、「⑤ 既存の政党に属さない」というのもこの観点です。自身の考えがあるのであればそれを訴えれば良く、それ以外の要素というのは虚飾に過ぎません。現実的な観点からすれば人員もノウハウも組織票も得られるのでしょうが、それは本人の実際の能力を過大に見せてしまうことになります。こういったものを欲する時点で「政治家として何かを実現する」ということと「選挙に当選する」ということの主客が転倒しているように思われます。選挙に当選することが目的ではないはずです(と信じたい)。
落選時のリスクを減らすということ
もう1点は落選した場合のリスクを減らすということです。選挙には多額のお金がかかるし、さらに落選したら無職というのが選挙に立候補するにあたっての大きなハードルとなっています。独身であればまだしも、パートナーがいたり、子どもがいたりする場合には大きな問題となるでしょう。ということで、立候補のハードルを下げるためには、落選時のリスクをへらす必要があります。それを実現するためのチャレンジは大きく2点です。
仕事を辞めない
まずは、仕事を辞めないということです。仕事を辞めなければ、落選したとしてもこれまでどおりの生活が維持できるためです。このためのチャレンジが「①ながら選挙」です。わたしは選挙期間が始まるまで、通常通り勤務していました。作業を集中して行いたかったり選挙管理委員会に行かなければならなかったりというタイミングで有休を取得して一部抜けることはあったものの、基本的には平常通り勤務していました。そして、選挙期間は5日間有休を取得しました。
選挙に関する活動を「有休」で対応する、というのは実現の難易度を下げるためです。数ヶ月の休職となると会社に対して何らかの申請と承認を求める手続きが必要かと思います。一方で、わたしのチャレンジのような形であれば単なる有給休暇の取得なので難易度は低いはずです。何の活動のために使おうと会社に承認を求める必要はありません(従業員がそもそも政治活動&選挙活動をやって良いのか、という観点はあります。その点、わたしは身分そのままで選挙に出ることも許容してくれる度量のある会社だったのでありがたかったです)。
選挙活動に掛かる費用を抑える
また、金銭的な負担も無視できません。普通の選挙を行えば、人口10万人程度の市議会議員選挙で300万というのが相場らしいです。一部公費での負担があるにしても、これだけのお金を勝つか負けるか分からない勝負に賭けるというのはこれまた大きなハードルです。このためのチャレンジが「④ほぼゼロ円選挙」です。
まだきっちり整理ができていないのですが、今回の選挙戦で掛かった費用はだいたい30万円くらいです。選挙カーや選挙事務所といった大物を使っていないこと、印刷物やWebサイトなど作成費用の掛かる部分を自前でやったことが大きな要因です。
選挙カーなどを使わないというのは判断次第です。また、自前でやるということについても同じです。わたしは別にデザイナーでもなんでもありません。
当初の見込みとその若干の変化について
当初の見込み
まったくの無所属新人がこういった無謀なチャレンジをやろうというのです。当初は、正直言って勝てる見込みはありませんでした。言ってみれば、観測気球になれたら良いな程度で考えていました。自分の結果を見て、こういう活動をやるとどの程度取れるのかということを示したいということです。それで足りないのであれば、どの程度他の活動をやれば良いのかがある程度は分かるであろうからです。
しかし、改革派と目される政治家の方からもネガティブな発言もあり、いよいよこの問題は根深いと思いました。正直、個人的に腹が立ったという側面もあります。立場のある人のこのような発言が「新しい道を潰」しているのです。
選挙カーはなし、お金も使わず、ネット中心…「新しいスタイル」で選挙に挑戦する。その心意気は応援したいし、共感もする。しかし同時に、その「新しいスタイル」でど惨敗したら、むしろ新しい道を潰すことになりかねないということにも自覚的でなければいけないな、と。 https://t.co/AfV1aFBZeF
— おときた駿(あたらしい党 代表) (@otokita) March 25, 2019
また、これまで関わっていた市民団体のメンバや同僚の方、そしてこれまで運営してきたブログの読者の方など、多くの方が出馬の意思表明の記事に共感し、支援を申し出てくれました。その結果、選挙期間中にも相応の活動が行えるような体制ができました。こういったこともあり、より選挙に勝つという方向性も多少模索する、というか模索できるようになりました。
追加で行ったこと
これらの変化を受けて行ったのはこのあたりです。
① ポスティングの実施
政治活動として、これまでのブログの内容を整理したものを印刷してポスティング業者に依頼して1万戸程度に配布。
待機児童に関する記事を作成して、その記事をWeb広告で配信。
③ 選挙期間中での徹底的な路上活動
選挙期間中は徹底的に路上に出て、ビラ配りに専念。
①と②は広報の強化です。知名度不足を補うためのものです。こちらは当然お金がかかりますので「ほぼゼロ円選挙」のポリシーに抵触します。ただし、これを行うにしても一般的な費用(300万円)からはすればたいした金額ではないことからやってみることにしました。なお、選挙にかかった費用の半分以上はこの広告費で、これも含めての費用がだいたい30万です。
③は「ネット選挙」のポリシーに抵触しますが、こちらもリアルでの圧倒的な知名度不足を補うためのものです。選挙期間中の7日間という限られた期間であること、今回から配布可能となった証紙ビラを用いることによって選挙カーや拡声器を使わずとも活動はできるであろうことからやってみることにしました。結果的には発行制限枚数である4000枚を配り切ることができました。
今回の結果
前置きがずいぶんと長くなりましたが、これらのチャレンジの結果。結果は44人中の33人目。得票数は985。当選者での最低得票数は1062票なので、77票足りなかったことになります。
元々は観測気球のつもりだったわけなので、そして出馬表明から1ヶ月もないようなチャレンジだったので、それを踏まえると健闘したと言えなくもありません。あと1、2ヶ月でも早く活動をスタートできていたら、まったく同じことをやっていても勝利できていた可能性は十分あるでしょう。
「勝てば全てが勝因、負ければ全てが敗因」という言葉が横行する選挙業界において、この事例はどうせ着目されることはないのでしょうが、このようなスタイルでもそこそこ良い勝負ができたというのは大きな収穫だと考えています。少なくとも「新しい道を潰す」ことにはならなかったかと思います。
最後に
今回は、わたしの選挙戦の振り返りについて書いてきました。もう少し具体的な戦術の部分については改めて書くことにします。今回の記事中に書いたとおり、当初はあまり勝てる見込みもない中でのスタートでしたが、多くの方の協力もあり、いっぱしの選挙戦を行うことができました。これは関わっていただいたボランティアの皆さんのおかげです。また、選挙期間中は家を空けることも多く、その間の子どもの面倒を見てくれていた妻のおかげです。本当にありがとうございます。
繰り返しになりますが、今回のチャレンジで目指していたのは「世の中の問題を本当に解決したいと思う人間が政治家を目指すにあたってのハードルを下げること」でした。これで勝利できていれば文句なしにこれまでの選挙を変える一つのきっかけになっていたと思うのですが、善戦はしたものの負けるという結果だったので、今後の参考とされるかどうかは微妙なところかと思います。
とはいえ、旧態依然とした選挙戦が、今回わたしがやってみたような方向性へと変化しつつあるというのは事実かと思います。投票日の翌日にこんなツイートがバズりました。
未成年の私の、初めての選挙でした!!!
— 古街 こむ (@pale_colour) April 21, 2019
以下感想 pic.twitter.com/urQg7jEq0Y
まったくもっておっしゃるとおりだと思います。そして、こういった内容に共感が集まるということは、変化を求めている芽はあるのだと考えています。しかしながら、選挙カーを使わず、ネット中心で活動してもなかなか当選ラインには届かないというのが2019時点での現実でした。それはわたしが身をもって証明しました。
ただし、これはあくまで現時点での結果であって、今後もそうであるというわけではありません。次の統一地方選は4年後。インターネットの生活への浸透は間違いなく今以上に進むでしょうから、その影響力はさらに拡大するでしょう。
そのときにわたしがどういう立場で何をやっているのかはさすがに4年も先なので何ともですが、選挙(及び選挙活動)がハードルとなって能力のある人が政治を目指さない(目指したとしても勝てない)という問題は結構重要だと思っているので、今後も自身の経験を踏まえ取り組んでいきたいと考えております。
同様のチャレンジを考えている方への注意事項
最後の最後に、同様のチャンレンジを考えている方について注意すべきポイントを手短に書いておきます。
① ブログの発信などをすでに行っていることを前提としている
わたしは2年以上、保育園入園をはじめとした中央区の行政に関するブログを書いてきました。入園に関する最低点数の情報はほぼ保活を行う人は見ている情報で、路上で活動していると毎日数人は声掛けしてくれる程度には浸透していました。こういった特定のセグメントに対して刺さる情報なしに挑んでもなかなか難しいと思います。
② 選挙区が都心部である
わたしが住んでいる中央区は都心部なので、こういったチャレンジにも関心のある人が多い可能性が高いです。また、人口構成としても中央区は若い世代(30代から40代)が多いという特長があります。高齢者の多い自治体で同様のことをやっても反応はないでしょう。
③ 先行者利益
このような挑戦を過去にやった人がどの程度いたのか十分に調べていないのですが、初めてやったからこそ注目されたという点もあるかと思います。同じことを再度やって同様の反応があるかというとそうでもないので注意が必要です。
ともあれ、新しい挑戦をされる方はぜひ応援できたらと思いますので、何か協力できることがありましたらぜひお声がけください。