政治家と町会の闇?なぜ中央区では地元の有力者が高額な報酬のある選挙管理委員に就いているのか


 おはようございます。今回は、選挙管理委員会について書きます。発端としてはこんなツイートが流れてきたことから。

 

 選挙管理委員会の構成員である選挙管理委員の選任が議会の多数派による推薦によって進められていて公正ではないという主張です。

 

 そう言えば、先日に補正予算の関係で議会の傍聴に行きまして、そのときにやっていたのが選挙管理委員の選挙でした。上記のツイートにあるとおり、原案はおそらく議会の多数派が推薦した人で、一部の反対はあったものの多数派が推薦するだけに圧倒的な多数で賛成して原案のとおりの方が選任されることになりました。

 

 選挙管理委員は「選挙権を有する者で、人格が高潔で、政治及び選挙に関し公正な識見を有するもの*1とあります(地方自治法182条)。上記の松本氏が主張するように、公正な選挙を行うための委員会の委員が選挙によって選ばれた議員によって決められるという仕組みがまず不思議なんですが、それ以外にも色々となんじゃこりゃあと思うところが多々ありまして、ちょっと調べてみようと思ったのでした。

不思議ポイント1:なぜ公募ではないのか?

なぜ公募でない?

 1点目はなぜ、議会による推薦なのかということ。地方自治法には「普通地方公共団体の議会においてこれを選挙する」とありますので、議会が決めるという点については納得行かないにしても一旦置いておきますが、問題はその選挙の候補者の決め方の部分。

 

 この部分は法律に書いてあるわけではないので必ずしも推薦でなければならないということはないのですが、中央区の現状の仕組みでは自薦、すなわち公募のような形での立候補は認められていません。あくまで推薦された人しか投票の対象にならないとのこと。さらには、事前に各議員に対して誰が立候補しているのか知らされることもないという異様さ。中央区の区議会議員、高橋氏は以下のように書いています。

何か決まりはあるのか?

 この件については、国会での質問主意書が見つかりました*2

 丸山穂高氏の「選挙管理委員会に関する質問主意書」というもので、背景として特定の会派が推薦する人が実際に選挙管理委員になっている例が多いことを挙げ、その選定方法の基準や公募を行っている自治体数などについて聞いています*3。今回の問題意識に極めて近い内容です。

 

 この回答として明らかになったのは、選挙管理委員をどのように選ぶべきというというルールはないということ。また、公募している事例はあるもののそれがどの程度あるのかについては政府としては把握されていないということ。つまり、選挙管理委員を公募するかどうかについては各自治体による裁量の範囲であるということ、やろうと思えば公募にもできるのだけれどもあえてそうなっていないということです。

不思議ポイント2:なぜただの素人なのか?

委員は、あくまで地元の有力者

 次に、なぜ推薦される方々がタダの素人なのかという点です。調べてみると、この選挙管理委員というポジションになっている例として多いのは元議員が多いらしいです。ただ、中央区の例で言うとその構成としての多数派は議員ではなく、地元の有力者っぽい人たち。こちらが現在の選挙管理委員。

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 その現在の経歴をググってみたのが以下の結果(同姓同名の別人の可能性もあります)。

山内氏 → 勝どき西町会 会長
http://chokai-jichikai.genki365.net/gnkc08/pub/sheet.php?id=3342
渡辺氏 → 有限会社 相鴨鳥安 代表取締役
https://nihonbashi-tokyo.jp/enjoy/people/201201/
青木氏 → (情報なし)
長崎氏 → 中央小学校防災拠点運営委員会 委員長
https://city.chuo.lg.jp/bosai/bosai/katei_tiiki_torikumi/chiikitorikumi/bousaiosirase/2nendo/_user_bosai_20211028170731892.files/R2_chuo.pdf

 

 少なくともここから言えるのが、政治や行政、住民参加など選挙に関する専門的な知見をお持ちの方々であるとは思われないこと。町会の会長だったり、地元企業の代表取締役などあくまで地域の代表者といった立ち位置の方ばかり。複数名を選ぶのだから専門家と地元の有力者という構成であればまだ専門的知識と地元の考え方のバランスを取ったのかなといった理解もできますがそういうわけでもなさそうです。

具体的には何をやっているのか?

 もっとも、何らかの専門的な知識を持っている人が選挙管理委員として求められているわけではありません。定義はあくまで「選挙権を有する者で、人格が高潔で、政治及び選挙に関し公正な識見を有するもの」であって、そこに専門的知識は必須とはされておりません。

 

 また、実際に行われていることもそれほど複雑なことであるとは思えません。まずもって選挙の仕組みという極めて民主主義に大事なシロモノは各自治体で勝手に決めることはできない(やられたら色々大変)ので、自治体での選挙管理委員会で行えることはわずか。

 

 実際、Web上で確認のできる活動としては定期的に開催される委員会くらい。だいたい月に1,2回で、時間は30分〜1時間半のものが多い印象。

 

 そして、やっていることもそんなに複雑なことをやっているわけではありません。一例として、これは直近の9月定例会の議事録。

 

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 「決定事項」としてあるのは「在外選挙人名簿の登録」ですが、これは人衆の確認だけ。後の「報告事項」はその名の通り報告。明るい選挙作品コンクールの結果、公職選挙法の改正、今後のスケジュールなど。ほぼほぼ、事務局があらかじめ用意しておいた議題を喋って終わりだと思われます。

 

 この中で、数少ない実際の意思決定と言えるようなものは作品コンクールの審査。「選挙管理委員による協議の結果、12点を入選作品とし、うち1点を中央区最優秀作品とした」とあります。

 

 数回の議事録を見てみましたが、行っていることといえばだいたいこの程度でした。

不思議ポイント3:なぜここまで待遇が高額なのか?

時給10万以上!?

 ここまで見てきて、「まあそういうもんでしょ」と感じられる方もそれなりにおられるのかと思います。似たような話で、地元民を交えた会合の中で、こういったゆるい話をする場というのはそれなりに多そうです。

 

 しかしながら、これらと同列に扱うことはできません。それは、この委員に対して非常に高額の報酬が支払われているため。その報酬は4名で年間1,100万円!!委員長がちょっと高い、とかあるのでしょうが、だいたい1人あたり250万円くらいは支給されているとみなして良さそう。

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 もちろん、これがフルタイムでの給料だったらそれほど高いという印象はないでしょうが、先ほど書いたように実際の活動はほぼありません。たかだか月1,2回で1時間程度の会議に参加してこの給料だとすると、随分と美味しい話に聞こえてきます。

 

 ちょっと多めに見積もって月2回で1回あたりが1時間だとすると、毎月2時間でこれが1年続くと2時間x12ヶ月で24時間。これを先ほどの250万円で割ると、なんと、時給10.4万円!なんてことになります。

 

不思議なポイントから見えてくるもの

 これまで、選挙管理委員会という仕組みについての不思議なポイントについて挙げてきました。3つのポイントは以下のとおり。

不思議ポイント①:公募ではなくて、議会の多数派による推薦である

不思議ポイント②:その推薦者は、専門家ではなく地元の有力者

不思議ポイント③:にもかかわらず、超高額な報酬が発生している

 

 超高額な報酬がもらえる仕事を特に専門性もなさそうな素人の地元有識者がやっていいて、誰が委員になるかは実質的に議会の多数派である自民党が決めています。

 

 なんでこんなことが起こっているのでしょうか。この事実を並べてみることで素直に思いつくのは、この選挙管理委員のポストが議会の多数派からの地元有力者に対しての、ある種の利益供与に使われてないか?ということではないでしょうか。

 

 議会の多数派は地元有力者に対して、超高報酬な仕事を提供する。地元有力者の側はその見返りとして選挙の際に労働力を提供するといった構造です。

 

 この令和の世の中に、そして東京のど真ん中で、こんなコテコテな旧世代的癒着関係があるなどということは思いたくないですが、1つの可能性として書いてみました。自民党の議員の皆さんにはぜひ反論をいただけたらと考えております。

 

 なお、今回はたまたまのきっかけとして選挙管理委員会について書いてきましたが、これに限らず与党自民党議員と町内会の関係性はずいぶんと近いようだということが調べれば調べるほどに出てきています。これについてはまた改めて書いてみようと思います。

 

 最後に補足として書いておくと、同じ地元に対して何らかの活動を行う人たちという意味で両者は近い立場にあって、その両者の関係を一切断つべきということを言っているわけではありません。お互いに協力し合うということはむしろ積極的に行っていくべきでしょう。ただし問題はそれが何らかの利益のやり取りという形で繋がっているということです。たとえば地方自治法260条の2には「認可地縁団体は、特定の政党のために利用してはならない。」とあって、明確に町会が特定の政党の応援団になることを禁じています。

 

 さらに言うと、中央区は近年多くのマンションが立ち並ぶようになって、数としては圧倒的にマンション住人の方が多い構造になっています。マンションでは戸建てと比較すると町会に接する機会というのはかなり少なく、これによって町会が住民を代表するという機能も弱まっているように思われ、この点も課題と考えています。新たな町会の形が求められています。

*1:地方自治法 | e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000067

*2:質問主意書というのはざっくり言うと、国としてどのような考え方を持っているのかを聞くための質問状です

*3:選挙管理委員会に関する質問主意書 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a203008.htm

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