中央区の情報公開・個人情報保護審査会に参加します

国会中に遊んでいる人たちのイラスト

  こんにちわ、ほづみゆうきです。このブログの開始当初にわたしは保育園と予算・決算についての開示請求を中央区に対して行っていたのですが、随分遅れてのその続きです。こちらで要望していた情報を開示いただくことができず、不服申し立ての手続きを行ったのが3月初旬のことで、この不服申し立てに基づく「情報公開・個人情報保護審査会」がようやく次週行われることになりました。つきましては、今回はわたしの頭の整理も兼ねて、こちらについて書きます。

「情報公開・個人情報保護審査会」とは?

 まず、情報公開・個人情報保護審査会とは何でしょうか。これまでの人生で関わったことがない人が大半かと思いますので、まずはこちらの説明から。中央区のWebサイトにはこの審査会について、「情報公開条例および個人情報保護条例に基づく開示・非開示の決定に対する異議申立てについて、公平かつ客観的な立場から審査を行う」との記述があります。もう1つ、総務省のWebサイトには以下のような図とともに「第三者的立場から、公正かつ中立的に調査審議」を行う場という説明があります(これは国の場合の説明ですが、大枠は同じかと思います)。

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引用元) 総務省|情報公開・個人情報保護審査会|情報公開・個人情報保護審査会

 

 すなわち、この審査会は審査請求人(わたし)と処分庁(中央区)の両者の意見を聞いて、第三者的な視点から公正かつ中立的に開示/不開示決定の審査を行う機関ということです。

 住民からの開示請求に対して、開示するか非開示にするかはあくまで自治体が判断するものですので、当然自治体側の思惑が大いに働くことになりがちです。自治体がわざわざ情報を出したがることは残念ながらありません。したがって、実際には存在するものであったとしても請求者の文章を最大限都合の良いように解釈して、不存在扱いにしてしまうなどということも想定されます。この場合、住民の知る権利はないがしろにされてしまいます。このような事態に至った際に単に泣き寝入りするのではなく、改めて第三者を交えて審議される場が情報公開・個人情報保護審査会です。この場では、審査請求人であるわたしは意見書という形で改めて意見を提出できることの他、口頭陳述、つまり自治体と審査会の委員に対して口頭で意見を述べることもできるようになっています。

情報公開・個人情報保護審査会での審議に至るまでの流れ

 この情報公開・個人情報保護審査会での審議に至るまでの経緯をざっと整理してみたのが以下の図です。開示請求を出した件や不開示決定通知を受けた件についてはブログにも書きましたが、それ以降にもいくつかの手続きがありました。これらも含めて、簡単にそれぞれ説明してみます。

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(1) 開示請求

 まず最初に行ったのが開示請求です。簡単に言ってしまえば、行政側によって公開されていない情報を見せてもらうことです。開示請求のための所定の様式がありますので、これを自治体の窓口に提出することで手続きが行えます。わたしが今回開示請求を行ったのは以下の内容です。

1) 平成28年度の予算書(個々の事業の予算額や使途が記載されており、情報公開コーナーで閲覧できる文書)全体の電磁的記録(Excel等の文字情報のコピー・編集が可能なファイル形式)
2) 平成27年度の予算書(個々の事業の予算額や使途が記載されており、情報公開コーナーで閲覧できる文書)全体の電磁的記録(Excel等の文字情報のコピー・編集が可能なファイル形式)
3) 平成27年度の決算書(個々の事業の執行額や使途が記載されており、情報公開コーナーで閲覧できる文書)全体の電磁的記録(Excel等の文字情報のコピー・編集が可能なファイル形式)
4) 平成29年度4月の認可保育所の申し込み状況(個々の保育所への希望者数が年齢ごとに記載された文書)の電磁的記録(Excel等の文字情報のコピー・編集が可能なファイル形式)
5) 平成28年度4月の認可保育所の申し込み状況(個々の保育所への希望者数が年齢ごとに記載された文書)の電磁的記録(Excel等の文字情報のコピー・編集が可能なファイル形式)
6) 平成27年度4月の認可保育所の申し込み状況(個々の保育所への希望者数が年齢ごとに記載された文書)の電磁的記録(Excel等の文字情報のコピー・編集が可能なファイル形式)
7) 平成29年度4月の保育園入園の申込における歳時クラス別の利用調整指数の分布(歳時クラス別で利用調整指数の点数ごとの申込者の人数が分かる文書)の電磁的記録(Excel等の文字情報のコピー・編集が可能なファイル形式)
8) 平成28年度4月の保育園入園の申込における歳時クラス別の利用調整指数の分布(歳時クラス別で利用調整指数の点数ごとの申込者の人数が分かる文書)の電磁的記録(Excel等の文字情報のコピー・編集が可能なファイル形式)
9) 平成27年度4月の保育園入園の申込における歳時クラス別の利用調整指数の分布(歳時クラス別で利用調整指数の点数ごとの申込者の人数が分かる文書)の電磁的記録(Excel等の文字情報のコピー・編集が可能なファイル形式)

 自治体側に都合の良い解釈をされないよう、ごちゃごちゃと細かく書いているので表現がややこしいのですが、多少分かりやすく整理すると求めている内容は以下の4点です。

1) 予算書(個々の事業の予算額や使途が記載されており、情報公開コーナーで閲覧できる文書)の文書ファイル
2) 決算書(個々の事業の執行額や使途が記載されており、情報公開コーナーで閲覧できる文書)の文書ファイル
3) 認可保育所の申し込み状況(個々の保育所への希望者数が年齢ごとに記載された文書)の文書ファイル
4) 保育園入園の申込における歳時クラス別の利用調整指数の分布(歳時クラス別で利用調整指数の点数ごとの申込者の人数が分かる文書)の文書ファイル

 予算、決算に関する情報については、中央区の財政状況を調べてみようと思ったところWebサイトを見てもこれらの基本的な情報が掲載されていなかったことから開示希望したものです。一応、区の情報公開コーナーには存在するらしいのですが、空いている時間が平日の17時までなので、普通の労働者にとっては閲覧不可能なので文書ファイルでの公開を求めました。

 保育園に関する情報については、わたし自身が保育園の希望を出す際に参考としてこういった情報があるべきと切実に感じたために開示希望したものです。申込状況については、どこの競争率が高いのか(低いのか)を知ることによって、希望園の優先順位の選択にあたっての重要な情報源となります。また、利用調整指数の分布については、提出する前の段階で自分の家庭が子どもを保育園に預けられるかどうかについておおよその感触を掴むことができるものです。

 細かい手続きや請求した内容については過去の記事にありますので、こちらをご覧ください。 

ninofku.hatenablog.com

(2) 不開示決定通知

 開示請求への回答として、自治体側からは開示か不開示かについての通知が来ます。今回のケースでは不開示という扱いでしたので、「不」開示決定通知という書類が届きました。内容としては簡単に整理すると以下のとおりでした。

<予算、決算に関する情報>

  • 回答:条例の適用除外である
  • 理由:上記(1)から(3)までの情報は、本区の図書館や情報公開コーナーにおいて、閲覧及び貸出が可能な情報である
  • 根拠:第2条第2項第2号に規定する「図書館 その他の区の施設において、閲覧に供し、又は貸し出すことを目的 とする図書等」に該当する

 

<保育園に関する情報>

  • 回答:非開示とする
  • 理由:上記(4)から(9)までの情報は、本区の利用調整の方法(保育園ごとではなく、申込者の指数順で行っている。)などから特段の必要性がないため、このような統計はとっておらず、区政情報は存在しない
  • 根拠:条例第11条第2項の「開示請求に係る区政情報を保有していないとき」に該当する

  これらの主張については到底納得できるものではありません。具体的な反論については以下の記事で書いていますので、ご興味があればこちらをご覧ください。

ninofku.hatenablog.com

(3) 審査請求

 自治体の不開示決定通知に納得が行かない場合に審査のやり直しを求める際の手続きがこちらで、審査請求書という書類を提出します。この審査請求書に基づいて両者の意見を聞いて判断する場が情報公開・個人情報保護審査会です。審査請求書に書いた内容は上記の不開示決定の記事に書いた内容とほぼ同様です。

(4) 弁明書の提出

 審査請求人(審査請求を出した人、今回はわたし)から提出された審査請求書における主張に対する自治体側の見解が記載された書類が弁明書です(関連する本を読んだところ「理由説明書」という名称もあるようですが、中央区では「弁明書」という呼称でしたので、それに合わせました)。この内容が情報公開・個人情報保護審査会での自治体側の主張の基本的な立ち位置になるようです。内容については以下で簡単に紹介します。 

(5) 意見書の提出

 情報公開・個人情報保護審査会に参加するにあたって、審査請求人側から任意で提出できる書類で、弁明書に対して反論を述べるという位置付けのものです。こちらについても後述します。

(6) 情報公開・個人情報保護審査会

 これらの手続きを経た上で、情報公開・個人情報保護審査会が開催されます。この場はすでに書いたとおり、審査請求人と自治体の双方の意見を第三者である審査会委員を交えて審議する場です。

 ちなみに開示請求を出したのが今年の1月で、今は7月。最初のタイミングから半年も経過しています。なお、審査請求書を提出したのが2月から3月にかけてなので、そこからたっぷり3ヶ月もかかっていることになります。


今回の審査会の議論の論点

 今回の審査会の議論の論点について、簡単に紹介しておきます。

保育園に関する議論

弁明書における中央区の主張
・審査請求人の求めるような統計情報は保有しておらず、不存在である。

わたしの主張
・統計情報という形では存在しないにせよ、開示を求めている情報自体は存在するはずである。

・こちら側が求めている情報は明らかであり、どのような形であれば開示できるのか提案いただきたい。

 まず、議論の対象となっているのは認可保育園の申込状況の方です。利用調整指数の分布については任意開示ということで情報提供をいただきました。こちらについては以下の記事に内容を書いています。実際のデータも公開しておりますので、ぜひご覧ください。

ninofku.hatenablog.com

  認可保育園の申込状況について、区側の説明はあくまで「審査請求人の求める情報は保有していない」の1点張りです。これはわたしの書き方が良くなかったこともあるのですが、申込状況の開示請求について「認可保育所の申し込み状況(個々の保育所への希望者数が年齢ごとに記載された文書)」と書いていました。問題は「個々の保育所への希望者数が年齢ごとに記載された文書」という部分で、そのものずばりの文書は存在しないということで、このような反論の余地を与えてしまっています。このような屁理屈を防ぐためには「・・・が記載された文書」ではなく「・・・が分かる文書」とすることで逃げ場をなくすことができるようです。

 とはいえ、開示請求においても、審査請求においても、この他のメールでのやり取りにおいても、こちらの求めている情報が何であるかは何度も伝えています。とすれば、このような言葉尻を捉えた屁理屈をこねる前にこちらの要求が何であるのかを協議で把握し、その上で開示の可否を判断するべきです。

予算・決算に関する議論

弁明書における中央区の主張
・条例第2条第2項第2号の規定により「図書館その他区の施設において、 閲覧に供し、又は貸し出すことを目的とする図書等」は区政情報でないとされている。審査請求人の求める情報は本項に該当するので、区政情報ではない。したがって、開示の対象外である。

・区政情報であるとしても、審査請求人が求める情報は印刷業者が製本したものであり、中央区情報公開条例施行規則第6条の2第2項の「実施が容易な場合」には該当しない

わたしの主張

・たしかに条例にそのような項は存在するが、このような規定は他の自治体には存在しないものであり、あくまで限定的に捉えられるべきもの。すなわち、この規定は「すでに広く公開されているものがあるのであれば開示請求は不要なのだからそれを利用すべし」と解釈するべき。したがって、別の媒体での提供を妨げるものではないと理解するべき。
・印刷業者が納品したPDFファイル、公開されている予算書、決算書の作成の元となった文書ファイルは存在しているはずで、こちらについては区政情報として扱われるべきものではないか。

 こちらも保育園の議論とほぼ同じような状況で、審査請求人の求める情報は「除外規定に該当するので区政情報ではなく、したがって開示の対象外」という主張の繰り返しです。たしかに中央区の情報公開条例にはこのような規定が存在しています。しかしながら、このような規定は国にも都にも調べた限りの他の区にも存在しないのです。他の情報公開条例に存在しないこと1点でもって妥当でないとは言いませんが、条例が憲法に定められた住民の知る権利を保障するものである以上、その適用は慎重に行われるべきです。少なくとも、情報公開コーナーなどで公開されていない形式、すなわち電子ファイルでの提供を妨げるものではないと理解すべきです。

 この情報が区政情報であるとしてもそれは印刷業者が製本したもので、それゆえに電子ファイルでの提供は困難という主張も屁理屈でしかありません。なぜならば、過去のメールのやり取りでPDFファイルの納品されていることは明らかであるからです。また、納品が万一なかったとしても、原稿の作成は自治体側で行っているはずであり、その原稿用のファイルは当然に区政情報という位置付けでしょう。メールでのやり取りでは「原稿用のファイルは浄書を目的としたもので区政情報に該当しない」といった主張もされていましたが、区として確定した情報を作成することなしに、印刷業者に発注できる理屈がまったく不明です。印刷業者に発注するにあたっては当然確定した原稿があって、その上で正式に調達を行っているはずであり、このプロセスを経る以上はその情報を個人のメモ扱いするのは無理があります

最後に

  知識としてはある程度理解していたものの、わたしもこのような場に参加するのは初めてなので、実際の現場がどのようなものなのかについてはよく分かりません。その場の雰囲気も含めて、改めてレポートしたいと思います。

 ここまで来て改めて感じるのは、情報の開示請求を行うにあたっての一連の手続きが非常に時間も手間もかかる作業であるということです。開示請求書を出すだけであればそれほど手間の掛かる作業ではありませんが、ある程度お作法を理解していないとわたしのように言葉尻を都合良く解釈されて「不開示」「不存在」という扱いを受けることになります。不開示となった場合の審査請求やその後の意見書の作成にあたっては、自治体側の主張を一つずつ挙げて、それへの反論を論理立てて組み立てて必要があります。多少素養のあるわたしであっても、これらの文書を作成するにあたってはそれなりの時間がかかってしまいます。こういった経験のない人がこれらの手続きを行うことは非常に困難と思われ、行ったにしてもうまい具合に自治体にはぐらかされるということも少なくないのでないかと推測されます。

 だからこそ、今回の件について安易に諦めてしまうのではなくあくまで手続きを前に進めていくこと、そしてのその経過を定期的にブログに掲載していくことは社会的に意義のあることであると考えています。全体の手続きの流れは自治体が変わっても、開示請求の対象が異なってもほとんど変わりありません。このような事例を残しておくことが、他の方が何らかの行政に対する疑義を持ったときのアクションの助けになるのかもしれません。同様の問題意識をお持ちの方がいらっしゃればぜひコメントなりメッセージをいただければと思います。

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